子朝菊パラレル+ファンタジーぽい+アーサーの家族とか捏造有り注意

日本の四季が大好きだという祖母が、突如日本への移住を決めて早1年。
祖母を心配した父が、1度様子見がてら日本に行こうか、と言い出したが早いか、10分後にはネットでイギリス、日本間の飛行機チケットを予約していた。期間は1週間。ちょうど今はプライマリーも夏季休暇で休みだし、他国のことを勉強しておくことも大事だ、というのが建前だ。
父本人は、仕事の都合で5日ほど送れて合流予定。
つまり本音は、仕事が忙しくて構えないから、外国で大人しく遊んできなさい。

アーサーは大きなキャリーケースにたくさんの書物と紅茶、あとは最低限の生活用品を詰め込んで、その日の間に日本へと旅立った。
アーサーも今年でもう11歳だ。
一人旅も出来るし、父の突然の行動にも慣れた。養ってもらっている身としては、保護者の要求は、こちらの不利益にさえならなければ受け入れておいた方が後々の都合が良い。


飛行機で12時間、空港から市街地までバスで1時間、更に電車を乗り継いで2時間。
降り立った駅は無人駅だった。改札に通す準備をしていた切符は、行く当てなくポケットに逆戻り。
駅は田んぼに囲まれている。
空を見上げると、複雑に絡んだ電線が見えるでもなく、それは綺麗な夕空が広がっていた。


駅前は栄えるなんて都市伝説かと思えるほど、そこには何もなかった。


いっそ清清しい思いでアーサーは辺りを見渡した。
緑、黄緑、緑、青。また緑。木々と田園と山と空が空間のほとんどを占めていた。話によると、日本では春夏秋冬でまた違った景色を見せるらしい。
今の季節は夏。秋には紅葉と言って、木の葉や田園が一面穏やかな暖色に染まると聞いた。
ここが、日本、と知らず口から零れ落ちた。

遠くの方の田んぼの合間に、ぽつりぽつり家が建っているのが見える。あの中のどれかが祖母の家なのだろうか。住所を書いたメモを父から渡されていたが、わかるはずがない。
駅の入り口付近には、二人乗りの小さなトラックが1台停まっていた。

よし、人に聞こう。

迷っている時間がもったいない。
アーサーはキャリーバックをゴロゴロ引いて、車に近づく。

「ぼうず、どうかしたんか」

近づいてくる子どもに気付いたようで、こちらから話掛ける前にトラックの運転席から顔を出して男が聞いてきた。
男というより、そろそろ老年に片足を突っ込もうかという容貌だ。髪は白髪の方が多く、顔には深く皺が刻まれていた。しかしその表情は快活であり、若々しい。

アーサーは父からもらったメモをそのまま手渡す。

「ここ、行きたい」

祖母から教えてもらった日本語は、幸い通じたようだ。
男はメモを受け取るとひとつ頷き、ドアを開けて外に出た。

「助手席に乗りな。歩きゃ結構かかるが、車ならすぐだ」

言うが早いか、アーサーのキャリーバックを軽々と持ち上げるとトラックの荷台に乗せた。素早い行動にアーサーが呆けていると、不思議そうな顔をした男が今更気付いたように手を打った。

「あぁ、言葉がわからねぇかい?あ、そうか助手席がわからんか?運転席…さっきまで俺がいた席の隣に乗りな。こっちこっち。そのメモの家まで連れてっちゃるよ」

助手席のドアを開けてジェスチャーで乗れと指示する男に、これが母国なら誘拐を考えただろうが(アーサーは実際に誘拐された過去がある)、この場所ではそんな考えを持つこと自体馬鹿みたいだった。
こくりと頷いて、ありがとうと日本語で御礼を言うと、「礼儀正しいぼうずだな」と言って男は破顔した。


2011.06.07
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