「最低だよ」
静かに静かに零れた言葉に、イギリスはひゅっと息をのんだ。
そしてその勢いのまま、銃口をアメリカに向ける。
「黙れ…!」
その声は掠れ、ほとんど音にならなかった。
同時に、パン、と乾いた銃声がひとつ。
「え」
撃ったイギリスは、目を見開いて固まった。
当たるはずはない。自分は確かに、アメリカの脇の何もない場所を狙った。
では、あの紅は?
目を見開いたアメリカの前に立つ、小柄な身体は。
ふら、と小さな身体が揺れる。
「っ、日本!」
崩れ落ちる前に、アメリカが慌てて抱きとめる。
「日本、日本!?」
軽い小さな身体のわき腹あたりに、赤い染みが浮き上がる。
白く清廉な軍服は、みるみるうちに赤く染まっていった。
「あ、…にほ、ん?」
カシャン、とイギリスの手から拳銃が落ちる。
青い顔でふらふらと、愛しかった弟と、自分を好きだと言ってくれた友人のもとに近づく。
周囲の景色はいつもとなんら変わりない、自分の執務室だ。ただ、ビロードの絨毯の上に横たわる白さだけが違和感を訴える。友人は目を閉じ、綺麗な白い軍服は、絨毯と同じ赤色に変わろうとしていた。なぜ。なにが。
自分が、撃った?
「っにほ、日本!すまない、日本!」
イギリスは弾かれる様に駆け出し、ふたりの傍に膝を付いた。そうして、軍服の上着を脱いで、日本の傷口を押さえていたアメリカの手をどかせて手早く止血を行う。手が震える。けれど、青を通り越して白い顔色の日本が、目の前に。
俺が撃った。
視界は滲んでいくのに日本の黒髪と白い軍服と、鮮烈な、紅色は消えない。
「にほん、日本、日本日本!」
あれだけ拒絶していたくせにこの取り乱しようは何だ。
消えて欲しいと、消したいと。心底、消えてほしいと願っていたのに。
俺が撃った。俺が、ころす?
日本がいなくなると思うだけで。
「っ日本!」
心が、冷えた。